離婚(婚姻費用)に関するQ&A
法律相談や依頼の際に,参考にしていただけたら,と思います。
▽目次▽婚姻費用について
1 婚姻費用って何?
2 婚姻費用の決め方
2-2 相手方の収入がわからない場合
3 婚姻費用の相場
4 算定表以上の婚姻費用を得る方法
5 算定表の婚姻費用を得られない場合
6 婚姻費用を支払わない場合
7 弁護士を介入させるメリット(宮崎県の事情)
1婚姻費用って何?
端的に言うと,離婚までの生活費です。
具体的には,離婚はしていないが,主に夫婦が別居中である場合,所得の少ない方が所得の多い方に対し,自身の生活と子を育てていくための費用を請求することができます。これが婚姻費用です。
<宮崎県では,夫婦子一人の家庭で,夫婦が別居(子は妻と同居)している場合,収入の少ない妻子が収入の多い夫に請求するのがよくあるケースです>
法的に,養育費は,「所得の多い配偶者が暮らしている水準と同様の生活水準を,配偶者とその子も保てるように支払っていく生活保持義務の現れ」と言われています。
生活保持義務とは,「生活水準を落としてでも払う必要があるお金」と解釈されています。
2婚姻費用の決め方
婚姻費用の決め方は次のとおりです。
(1)当事者同士で決定する
婚姻費用は,裁判をせずとも,話し合いで決定できます。
つまり,別居期間中の婚姻費用の金額・支払時期・支払期間・支払い方法などを当事者で決定できます。
ただし,婚姻費用に関する決定は,書面でするのがいいでしょう。
(2)家庭裁判所の調停で決定する
当事者同士での話し合いが出来ないという場合には,家庭裁判所を使う方法があります。
調停とは,調停委員を介在させての父母両当事者の話し合いです。
父母両当事者が直接対決することなく,あくまで調停委員を通じて話し合う場です。
調停は,概ね一月に1回(平日)開催されます。時間は数時間~半日程度かかることが多いです。
(3)家庭裁判所の審判で決定する
当事者同士での話し合いが裁判外・家庭裁判所の調停いずれでも出来なかったという場合,裁判官に決定してもらいます。
婚姻費用を決める調停が不成立になった場合には自動的に審判に移行します。
2-2相手方の収入がわからない場合
婚姻費用は,算定表記載の通り,双方の収入に応じて決まります。
通常,調停になったら,双方が所得申告書・源泉徴収票などを提出し合い,収入を決めます。
しかし,宮崎県では,自営の方が多かったり,副業が有るケースがあります,
相手方が宮崎県(ないし他)でいくら収入を正確に知ることはときとして難しいことがあります。
このときは,裁判所から調査嘱託や送付嘱託という方法をとって,税務署や職場に対し,収入が分かる書類を送付してもらうことになります。
3婚姻費用の相場
裁判官等を交えて作成された「養育費・婚姻費用算定表」(令和元年12月23日に公表された改訂標準算定表)が,発表されています。
実務上,婚姻費用の額は(ここ宮崎県でも)この表から大きく外れることは原則としてない,と言われています。
婚姻費用算定表はこちらから(外部リンク)
4算定表以上の婚姻費用を得る方法
婚姻費用の算定表は,「所得の少ない配偶者親や子が通常生活に必要な額」として定められていると考えられます。
逆に言えば,自身や子に,イレギュラーな事態が生じている場合
例えば
病気や怪我による治療費の必要
等の場合には,婚姻費用を予め増やすよう要求できます。
5算定表の婚姻費用を得られない場合
別居の原因が婚姻費用を請求する側にある場合,婚姻費用の請求が「権利の濫用」となり,減額ないし認められない可能性があります。
(東京家審平成20年7月31日・福岡高決平17年3月15日)
ただし,例えば,所得の低い配偶者が不貞行為を理由に娘を連れて別居したケースの場合,配偶者に落ち度はありますが,子に落ち度はないので子の分の婚姻費用は認められやすいです(東京高決昭40年7月16日等)
また,婚姻費用を算定する側が,(特に子がいないまたは子が大きいのに)働けるのに理由なく働いていない場合にも,減額対象になる可能性があります。
6婚姻費用を支払わない場合
(1)審判前仮処分
調停や審判で決着がつくまでの間,仮に定めた額の支払を求めることができます。
(2)履行勧告・履行命令
調停などで決まった額を相手が払わない場合,裁判所から相手方に対し,婚姻費用を支払うよう勧告や命令を発する制度があります。
特に履行命令に相手が従わない場合,10万円以下の過料が課されることがあるため,一定程度の効果があります。
(3)強制執行
相手方の財産(動産・不動産・預金・給与)を強制的に差押え,こちらのものとすることが出来ます。
この時,
・当事者同士での話し合いの場合には,強制執行受諾文言のある公正証書があるとき
・調停調書・審判・判決
があれば,速やかに差し押さえることが出来ます。
しかし,当事者同士での話し合いだけで婚姻費用を決定している場合には,一度調停などをしなければ差押えが出来ません。
7弁護士を介入させるメリット(宮崎県の事情)
宮崎県の場合,地域のつながりが密です。
「隣同士が顔見知りである」「夫婦の両親同士が仲がいい」等,宮崎県ならではの事情が多くあります。
ですから,婚姻費用のみが決まっていない状態で,かつ,当事者間でまもなく婚姻費用が決定出来そうであれば,あえて弁護士に「依頼をする」メリットは少ないかもしれません。
しかし,次のような場合には弁護士に「依頼するメリット」が有ります。
・当事者間での話し合いが全くできない時
・親権などが絡んで、離婚訴訟に発展しそうなとき
・配偶者が暴力をふるいそうなとき
・相手が決まりを守ってくれそうにないことがわかっているとき
・離婚問題で,精神的に疲れ果ててしまったとき
・相手が婚姻費用を支払わず,かつ,土地などの資産を持っている場合(宮崎県に多い) 等々
また,弁護士の介入を依頼しなくとも,弁護士に「相談」することで得られるものもあります。
弁護士は,法的に間違いのない書面の作成・手続の選択・遂行を行うことが出来ますので,のちのトラブルを未然に防ぐことができます。
特に宮崎県の当事務所では,婚姻費用の問題の場合,相談の場で丁寧なアドバイスや作成文書のチェックなどを心がけています。
いずれにしても,宮崎県で離婚や婚姻費用でお困りであれば,宮崎県の離婚問題を広く取り扱っている当事務所に一度相談されることをおすすめします。